小悪魔王子に見つかりました
だから、今日も私は、誰からも攻撃されないよう目立たない1日を過ご──。
トントン
へ?
1時間目の現代文の授業。
先生が「はい教科書28ページを開いて」とみんなに声をかけて数十秒経って。
背中を優しく叩かれた気がした。
いや、でも、そんなはずがない。
去年だって、クラスメイトの誰かからまともに声をかけられたことなんてなかった。
それに……私の後ろの席は……。
トントン
っ?!
また?!
さっきは気のせいと思ったけど……。
「……浅海さん」
すっごく優しくて小さい声が後ろからして私の耳に届いた。
嘘でしょ。
どうしよう。本当は私のことを呼んでなくて全部私の勘違いで、
振り向いた瞬間、やな顔をされたら。
いや、彼にはそんな顔をするイメージなんて全然ないんだけど。
うぅ……。
トントン
「浅海さんっ」
今度はさっきよりももっとクリアに聞こえた。
うわ、ここまで来たら私の幻聴とか勘違いだとは思えないよ。
これ明らかに呼んでるよね……。