小悪魔王子に見つかりました

「おいで」

そう言って手を伸ばして彼女の指先に触れれば、

綺麗な白い頬がみるみるうちに紅色に染まっていく。

彼女がこんな反応するのは、こういうことに慣れていないから。

きっと、相手が誰でもこういう顔をする。

だからこそ、俺以外の誰かにもこんな顔をするのかと思うと、どうしようもなく嫌で。

誰にも見せたくない。

自らあげたヘアピンなのに、

今は、それを外してその可愛い顔を誰にも見られないように隠してほしいなんて考えているんだから、

バカだと思う。

「う、うん」

とあからさまにぎこちない返事をしながら隣に座った浅海さん。

フワッと彼女のシャンプーの匂いが鼻を掠めて、俺の心臓の鼓動をさらに速くした。

「昨日、みんなとどうだった?」

「うん。すっごく楽しかった!羽芽ちゃんたちともたっくさん話せて……」

「そっか」

わざと、沈んだような声を出して目をそらしてうつむく。

そうしたら彼女が俺の変化にすぐ気づくと知っているから。

過去のことがあって、人一倍、相手の顔色を伺うようになったと知っているから。

そんな彼女の性格を利用して。
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