ハツカフィルム
そして、その視線の先には空虚なお母さんが横たわっていた。

皐月は僕に気が付くと、その瞬間涙が溢れだし声を出して泣き始めた。

こんな姿を見るのは初めてだった。
その日、僕らは方を寄せ合い感傷に浸った。

それでも日は流れ、あっという間に一週間が経とうとしていた。

今日は金曜日。そしてもうそろそろ夜九時を回るところだ。

いつもならこの位に電話が来るのだが、さすがに今日は来ないだろうと、早めに布団に着こうとした時、携帯から着信音が聞こえた。

出ると、やはり皐月だった。

「もしもし、今、大丈夫?」

「あ、うん。その。」

「今日は無いだろうと油断してたでしょ!」

彼女は思っていた以上に元気そうだった。
いや、無理やりそのテンションにしているのだろうか。
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