イジワル御曹司は偽のフィアンセ様❤︎
1 再会と突然に
私は周りから非常に真面目だと言われている。
もちろん否定はしない。自分でも真面目だと思っているのだから……。
でも真面目で得したことって正直あまりない。

「鴨居さんは真面目だから合コンなんて行かないよね?」

誘っているようで実は最初から誘う気のない言い方。
もし真面目じゃなかったら「そんなことないですよ〜私も合コン行く行く」って言っているかもしれないが、自他ともに認める真面目なので「はい」としか答えようがない。
そうかと思えば……。

「鴨居さん、今日急な用事が入ってしまって、残りの仕事お願いできないかな?」

と頼まれることがある。
でも彼女たちのいう急な用事の大半がデートだったり、本当は全く用事がないけど残業したくなかったり……普段の彼女たちをみていればわかる。
こんなとき人に流されない大人の女性なら「悪いけどあなたたちの仕事を代わりにするほど私も暇じゃないの。自分の仕事には責任を持って頂戴」とぴしゃりと言うのだろうが、私は言えないし、言えたらもっと違う人生が待っていたに違いない。
結局私って真面目だけどうまく使われているのだ。
そんな私、鴨居陽奈(かもいひな)は限りなく二十七歳に近い二十六歳だ。
見た目も中身も真面目な私に今まで浮いた話は全くなく、誰かを好きになった経験もない。
でも、恋愛ドラマを始め漫画や小説は大好きで、人一倍恋愛に興味を持っている。
と同時に恋愛に対する夢も大きい。
特に重視したいのは出会いだ。物語の主人公は大概面識のないイケメンとの偶然出会いだとか、片思いをしていた人から突然のアプローチ。
他にも最初は嫌いだったのに徐々にその人の良さを知り、気づいた時には恋に落ちていた……とか甘やかされて愛される溺愛など現実にはあり得ない恋に憧れてしまうのだ。
でもコミュニケーションスキルがないからいいなと思う男性がいても自分から話しかれられないのだ。
だが、そんな私に大きな転機が訪れたのだ。
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