イジワル御曹司は偽のフィアンセ様❤︎
「汐田課長、少し彼女をお借りしますね」

「ああ、頼むよ」

これって何か話があるってことよね。
こんな秘書の鏡のような人に一体何を言われるの?

「じゃあ鴨居さん、ミーティングルームに行きましょ」

「はい」

緊張しながら田辺さんの後をついていくが歩く姿も颯爽としてカッコよく、自分がこの部署に呼ばれた意味が益々分からなくなってきた。
秘書室の一番奥にあるミーティングルームに入ると座るように促される。
私が座ると田辺さんも座った。
そして田辺さんが口にしたのは「あなたで三人目よ」だった。
その言葉の意味が全くわからず首を傾げる。

「そうよね。いきなり三人目と言われてもとまどってしまうわよね」

「はい」

「社長のご子息である修平さんが今回専務に就任したのだけど……秘書との相性が悪くて、あなたで三人目なのよ」

「え?」

プロの秘書二人がダメなのになぜ私なの? 

「驚くわよね。全然違う部署のあなたをいきなり専務の秘書にしようとしているのだもの」

「なぜ私が選ばれたのですか? 秘書の何かもわからないのにいきなり異動でしかも専務の秘書ですよ。私は神谷専務と面識はありません。他のお二人同様わたしが専務の秘書など務まりません」

すると田辺さんは少し驚いた様子で目を丸くしている。

「え? 専務と面識がないの?」

「はい。ありません」

キッパリと答えると田辺さんは腕組みをし、首を捻った。

「あの……」

「ごめんなさいね。あなたがここに異動になったのは専務の強い希望だったの」

確かに部長にもそんなことを言われたがわたしは専務の顔すら知らない。
一体専務はどういう経緯で私のことを知ったのだろう。
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