イジワル御曹司は偽のフィアンセ様❤︎

その先生がまさかの御曹司とは……。
でも今思うと、服や持っているものだった様な気がする。
そんなことはどうでも良くて……。
あんなにみんなから絶大な人気を誇っていた先生が、なんで辞めてしまったの？
気になる。

「辞めた理由を聞いたら怒りますか？」

すると神谷専務は目を丸くした。

「俺が怒る？　どうして？」

「それは……私で三人目なんですよね」

専務は汐田課長をチラリと見た。
汐田課長は小さく頷いた。

「ああ、秘書が君で三人目ってことだね。だってしかたないだろ？　普通に仕事をしてくれりゃあいいのにご機嫌伺いとか人の目ばかりきにして……そういうのいらないよね」

確かにまちがっていない。
でも気を遣ってしまう気持ちはわからなくもない。いくら元教師とはいえ今は御曹司で専務なのだから……。
すると専務は不服そうに私をじーっと見つめた。

「何かいいたそうだね」

言っていいのかな？　でも気を遣われるのがいやなら言ってもいいのよね。

「それは、専務が御曹司だからですよ。なにか粗相があったらきっと社長の耳にもはいる。だからみなさん気を使ってしまうのではないのですか？」

すると専務はゲラゲラと笑い出した。

「そんなことはわかっているよ」

「え？」

「だがそういう考え方自体おもしろくないんだと」

確かに専務が先生だった時、生徒だからとか教師だからではなく一人の人間として接してくれていた。
今もその気持ちは変わっていないのかもしれない。

「ところで、教師をやめた理由を知りたいと言っていたね」

「できれば」

「じゃあ、今日仕事が終わったら俺に付き合って」

「え？」

何でそうなるの？　ここでは話せないほどすごい理由でもあったの？　
助けを求める様に汐田課長を見ると、首を横に振った。
これって素直に従った方がいいってこと？
なんだかよくわからないけど、とんでもないことになったことだけは確かかもしれない。