イジワル御曹司は偽のフィアンセ様❤︎
「お疲れ」

「お疲れ様です」

「異動初日で疲れているだろう。ゆっくり休んでと言いたいところなのだが……」

そう、１時間後に専務と会う約束をしているのだ。
自分があんな質問をしたことすごく後悔している。
じゃなきゃこの後掃除をして帰るだけだったのに……。

「いえ、大丈夫です。でも秘書としてやっていけるかとても不安です」

「大丈夫。慣れればできる。でもしいていえばもっと自信を持つことだな」

「……自信ですか」

自信なんて……ない。
それは仕事だけではなく全てにおいてだ。
仕事もプライベートも自慢できることなど何もない。

「君は仕事が丁寧だ。部長が渋ったのもうなずける。君の仕事ぶりは周りも評価しているんだ。だから自信を持ってほしい。自信を持つことで得ることはたくさんあるんだ。がんばってくれ」

「はい」

部長は何もいわなかったけど、渋ってくれたんだ。
それだけで少し気持ちが軽くなった様な気がした。
異動したことで知ったことでも私をそれだけ評価してくれたのだから。

「じゃあ、専務室の掃除をしておいてくれ」

「はい」
< 21 / 103 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop