イジワル御曹司は偽のフィアンセ様❤︎
烏龍茶を一口飲むと専務は私の方をみた。

「君が卒業した三年後に教師をやめたんだ」

「どうしてですか?」

「元々、この会社を継ぐことは教師になる前から決まっていたんだ。だが、教師になる夢は捨てきれなくてね……親父もまだ若かったし、しばらくは好きなことをやっていいって言ってくれたんだ」

「でも私が高2の時に赴任して……五年ですよね。早すぎませんか?」

専務は前を向くと、まるであの頃を懐かしむ様に「そうだね」と呟いた。
やっぱり教師が嫌でやめたんじゃなかったんだ。

「専務?」

答えを知りたくて声をかけると「今は専務の時間じゃないから、別の呼び方でよんでくれる?」
こんな時に何を言い出すかと思えば、専務は時間外?

「じゃあ、神谷さん?」

先生の方が言いやすいけど先生じゃない。
でも前回あったときはまだ先生だったわけで……。
苗字を呼ぶのも照れが入ってしまう。
でも専務的には納得していないのかな? 何となくだがそんな感じがした。

「本当は修平さんとか、修平とか……修がよかったけどな〜やっぱり君は真面目だ」

「真面目ですみませんね。私が最後に見たのはチョークかバスケットボールを持っている姿なので、名前呼びとかできません」

専務がクスッと笑った。

そして烏龍茶を一口飲むと再び私を見た。

「親父が倒れたんだよ」

「え?」
< 28 / 103 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop