イジワル御曹司は偽のフィアンセ様❤︎
「そう……ですよね」

納得したわけではない。
異例の人事異動。お偉いさんのワガママで選ばれたようなものだ。
しかし秘書室とは思いもしなかった。
だって私とは無縁というか対極だ。
そもそも私に秘書がつとまるの? 秘書の仕事って人との関わりが多い部署じゃない?
数字と向き合っている方が私には合っているというのに……。
でもどう足掻いてもどうにかなるわけではない。

「でも真面目な君ならきっといい秘書になれる。がんばってくれ」

部長からの激励を素直に受け止めることが今の私にはできなかった。

重い足取りで応接室をでると、部長が朝礼を行うことになった。

「突然だが、鴨居さんが秘書室に異動することになった」

すると女子社員たちがざわつく。
そりゃそうだ。なんで地味で真面目な私なんかが花形部署に異動するのだって思っているにちがいない。
でもそれは私自身が一番感じていること。往生際が悪いかもしれないが、代われるものなら代わって欲しい。
部長は私に一言挨拶をとふった。
でも何も考えていない状態でいきなりふられても困ってしまう。
「今まで大変お世話になりました。突然に人事に驚いております」としかいえなかった。
もう少し時間に猶予があれば向こうでも頑張りますとか言えたけど、人事に納得してないから気持ちは後ろ向きだ。
そんなしょぼい挨拶をフォローするように部長がはなす。

「彼女が抜けるのは経理にとってはかなり痛手だが、みんなよろしく頼む。尚しばらくの間補充はない。みんなで協力し合って欲しい。引き継ぎに関しては課長から説明があるのでよろしく頼む以上、今日も1日よろしく頼む」

話を締めくくるとみんなは席に戻った。
そして課長が二名の女子を呼んだ。
どうやら彼女たちが私の後を引き継ぐようだ。
だけどこの二人は今まで何度も私に泣きついて残業を回避してきた。
大丈夫だろうか。
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