イジワル御曹司は偽のフィアンセ様❤︎
 確かにうちの会社は海外との取引が多い。

「今回は大口の取引になりそうだから、しばらくは忙しいかもしれないね。特に専務は最近まで向こうにいたから顧客は専務を指名してくるんだ」

「そうですか」

専務にたいして信頼があるからこそのご指名だと思うけど、そうなると益々昨日のドッキリ発言はもう一度考えなおした方がいいのではと思ってしまう。
それに私がお見合い相手に気に入られるという発想自体持ち上げすぎなんだけど……やっぱり専務の提案はお断りする方向がいいような気がする。

「鴨居さん?」

「は、はい」

「僕の話聞いてた?」

つい他所ごとを考えてしまっていた。

「すみません」

「もう一度言うよ。君には昨日と同じようにデータ入力をたのみますが、その前に専務宛てに届いた郵便物の取り扱いについて説明をします」

「はい」と返事したものの早速頭の中にクエスチョンマークがついた。
郵便物の取り扱いって何?
課長にそれを聞こうとした時だった。

「鴨居さん、専務が到着します」

どうやら専務が来る前にメールが来るらしい。私と課長は専務室の入り口で待機。
秘書2日目。だけど昨日とは違う緊張に包まれる。
だって私キスしたんだよ。
何もなかったような顔ができるとおもう?
どくどくと身体中が緊張で落ち着かなくなる。
すると数十メートル先のエレベーターのドアが開いた。
役員専用エレベーターから専務が降りてきた。
ダークグレーのスーツに身を包み颯爽と歩く姿は堂々としている。私はそんな人と昨夜キスをした。
頭では忘れなさい。と警笛を鳴らしているが、本人を前にすると警笛など聞こえなくなる。
どうしよう。私は咄嗟に下を向く
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