イジワル御曹司は偽のフィアンセ様❤︎
上品な器に盛り付けされた料理は食べるのがもったいない……と思うのは私だけだろうか。
でも今は緊張して目の前の料理を楽しむ余裕などなかった。
専務と塩原社長は近況報告というのだろうか、互いの会社のことを話せる範囲ではなしている。
今日は新しい医療機器についての発注の件とか、秘密裏のプロジェクトについてとかの話をするのだろうと勝手に思い込んでいた。
すると塩原課長が姿勢を直した。
もしかして本題にはいる? そう思い緊張が走った。
「まあ、仕事の話はここまでとして、例の返事を聞きたいのだが」塩原社長はなぜかわたしをチラリと見た。
例の返事が何かも知らないのになぜわたしを見るのかまるでわからない。
一体何なの? そう思いながらチラリと専務を見ると、背筋を伸ばし上半身を真っ直ぐ前に倒した。
「その話ですが申し訳ありません。辞退させていただきたいのですが」と頭を下げたのだ。
何を辞退するの?
塩原社長はまたわたしを見る。
例の話ってなに? そしてなぜ塩原社長がわたしを見るの?

「その理由はもしかして、彼女かな?」

今度は私に答えを求めるように尋ねる。
話が読めない。
専務は何を辞退したの? 

「はい。そうです。ご報告が遅くなり申し訳ありません。実は彼女と結婚することになりまして」

え? 今何をいいました?

「そうなのかい?」

塩原社長が私に尋ねる。

どうしたらいいの?
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