イジワル御曹司は偽のフィアンセ様❤︎
「あれはどういうことでしょうか」

塩原社長をお見送りした後、私たちも帰ることにした。
車に乗ると、すぐにその思いをぶつけた。
だが専務は表情一つ変えず「あのまんまさ」と言ってスマホをとりだす。
いやいや、そうじゃないでしょ?
まんまってなに? いつの間にか婚約者にランクアップしているじゃない。

「あんなこと言ってよかったんですか?」

気を取り直し言い方を変えた。

「なにが?」

「ですから、塩原社長に嘘をついたんですよ。いつまで経っても私たちが婚しなかったらやっぱり別れましたって報告するつもりですか?」

「しないよ。そのつもりはないしね」

ん? そのつもりはないってなに?

「あの? 今のはどういう意味でしょうか?」

専務はスマホをしまうと視線を私にむけた。

「だから結婚すればいいんだよ」

「……え? なにをいっているのですか?」

あまりにも突拍子もない言葉にドン引きして、いいたいこともいえなくなるほど。

「別に俺はいいと思っている。大体、君だってお見合いを断る理由として俺と恋人になるのだ。嘘が回避できなきゃ将来的には結婚という可能性は大いにある」

もっともらしいことを言うが、どう考えたっておかしい。
結婚って一体誰とするものなの?
お互いが一生そばにいたい。いてほしい。そう思った時なのじゃないの?
そこには愛は必要不可欠で、損得でするものではないのでは?
いや、待てよ。
私のお見合いを阻止してくれると言ったのは、純粋に私を父の上司の息子とお見合いさせたかったからではなく、自分の縁談を断るために利用したってこと?

「専務!」

「何だよ。大きな声で」

「本当は自分の縁談を断るためにわたしを利用したってことですか?」
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