イジワル御曹司は偽のフィアンセ様❤︎
初デート
翌朝、私はスマホの着信音で目が覚めた。
土曜日ぐらいゆっくりさせてよと、眉間にシワを寄せ相手が誰かも確認せず電話にでる。
「もしもし?」
『俺だ』
俺?
「俺って……誰ですか?」
まだ半分夢の中で、電話越しの声にもピンとこない。
「恋人の声も忘れたのか?」
静かだが、怒りのこもった声と恋人と言われなれない言葉に目が覚める。
まさか。
「もしかして……専務ですか?」
ベッドから勢いよく起き上がる。
『いつまで寝てるんだ』
そんなに寝たかと壁掛け時計をみるとまだ七時半。
普段は七時に起きるが、休日は八時まで寝ることが私の贅沢なのだ。
「今日は休日なので、あと三十分ぐらいは寝る予定ですが」
開き直る私に、スマホ越しから大きなため息が聞こえた。
『ずいぶん余裕だな』
「え? なにがです?」
するとさらに大きなため息としばしの沈黙。
あれ? 私何か変なこと言った?
『明日は、君のご両親に会うというのに君はぶっつけ本番で臨むのか?』
ああっ! そうだった。
母に連絡したことで少し気が楽になっていた。
もちろん、どうするんだろうという不安や疑問はあったけど、心のどこかで専務がうまくやってくれるだろうと甘い考えでいた。
ヤバい。きっとさっきのため息は、呑気な私に呆れ返っていたんだ。
「す、すみません。で明日ですが——」
『十分で着替えて降りてこい』
「え? 十分?」
『窓から下を見てみろ』