イジワル御曹司は偽のフィアンセ様❤︎
「そんなに驚くことないだろう。一応結婚前提のお付き合いって設定だぞ。 デートもなしじゃご両親も怪しむだろ」

そうだけど……。

「だったらそう言ってくださいよ。そしたらもっとおしゃれしたのに」

だんだん言葉がフェードアウトしてしまった。
だが専務は前を向いたまま「君は何を着てもかわいいからいい」というので心臓はバクバクする。

「それで、そのデートですがどこか行くんですか?」

「君はどうしたい?」

質問したのに質問で返されてしまった。

「どうしたいと急に言われても……デート自体生まれて初めてなんで」

デートといえば遊園地や水族館、映画、山、川、海といろんなシチュエーションがあるが、自分がデートするなんて思ってもいなかったからわからない。
悩んでいることを察した専務は「魚は食べるのも見るのも好き?」と尋ねる。

「はい。好きです」

「わかった」というと、車は高速道路に入った。
魚というので水族館か海にでも行くのかな? と思ったんだけど、車は海から離れて、山の方へ向かっていた。その車中で「さて、明日のことだけど……」と切り出したのは専務だった。
母には3ヶ月前から付き合っているということになっているが、3ヶ月で結婚を決めたということは、スピード婚ということになる。
でも短い期間でも結婚したいと思う感情が私にはわからない。だって恋愛もしたことがないのだから。

「もうちょっと時間があればもっと互いのことを知ることができるが、俺たちには時間がない」

「はい」

全くその通りだ。

「だから、今日一日でなんとか互いを知れるようにしたいから、あれは嫌、これは嫌というのは一切なし。それと、客観視するな」

「客観視?」

「自分のことじゃないような感覚でいられたら君のご両親にすぐバレる。親を甘く見ないことだ。だから俺しか見るな。そして俺のことだけを考えてくれ。わかった?」
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