イジワル御曹司は偽のフィアンセ様❤︎
座敷から外に出ると橋を渡って梁に入る。
私たちの他にも家族連れとカップルがいた。
(やな)に入るとバケツをとり、鮎を待つ。
すると「今から始めます」というアナウンスがはいる。
しばらくすると、鮎が梁に上がってくる。
それを摘むのだけれど、初めての掴み取り。
もちろん生きている魚を素手で掴むのだが、動くからうまくつかめない。

「キャッ!」

「大丈夫か?」

「動くんで」

「当たり前だろ」と言いながら楽しそうに笑ってる。
すると後ろの方で「どこ見てるんだよ」と男の人が女性に文句を言っている。
こんなところで喧嘩? とチラリと後ろを見ると、女性の視線は専務にロックオン。
もしかして彼氏さん、やきもち焼いてるのかな。
でも今はそんなことよりも鮎を捕まえなきゃいけない。

「修平さん、何匹捕まえましたか?」

「二匹。後一匹は陽奈に任せたからな」

「は、はい」

梁に最後の鮎が登ってくると私は両手で捕まえた。

「修平さん、バケツバケツ」

専務がバケツを差し出す。
なんとか逃げずに鮎がバケツの中にはいってくれた。

「よかった〜」

安堵のため息がでた。

「よかったな」

「はい。ドキドキしたけど面白いですね」

「だろ? じゃあ、これを受付に持っていって調理してもらおう」

「はい」

受付で、一つを塩焼き。2つをフライにしてもらうことにした。
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