イジワル御曹司は偽のフィアンセ様❤︎
「できた」

「ああ、上手にできたじゃないか」

「ありがとうございます」

人生で初めて綺麗に魚の骨が取れた私の脳内はお祝いムードだ。

「ほら、あたたかいうちに食べてごらん」

「はい」

程よい塩加減とホクホク感。味は淡白だけどフライとはまた違う美味しさがある。
だがそれ以上に綺麗に魚が食べれたことでより美味しく感じた。

「でも以外だな」

「なにがです?」

「見た目は俺より魚の骨が上手にとれそうなのに」

「それ両親にもよく言われます」

「でもそのおかげで君のことをまた一つ知ることができたから、ここに来てよかったかもね」

それは私も同じだった。

魚を綺麗に食べれる人は見ていて気持ちがいいし、素敵だ。

食事を済ませ私たちは車に乗った。

専務がもっと景色のいいところがあるからと言って車を走らせた。

「すごい穴場でね、多分地元の人しか知らないところ。だけどちょっとくねくねしてるから気をつけて」

そういうと、車を右折させた。
だが、その瞬間「え?」と思わず声をあげた。

「驚いた?」

専務は私の反応を楽しんでいる様子。
でも驚くのもむりはない。
さっきまで綺麗な道路だったのが、急に細くなり、黄色の実線に亀裂がはいっててそこから雑草が生えている。
車がほとんど通らない道なのだろう。
しかもガードレールはなく、横に生えている植物は伸び放題。
もちろん対向車などいないし、くねくね道で保メンテナンスされていない道は時々段差でふわっと浮いたような感じになる。
いくらなんでもこの道は怖い。
私はアシストグリップをしっかりと握る。
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