イジワル御曹司は偽のフィアンセ様❤︎
どうやってこのキスに応えたらいいのか分からなくて心臓ばかりがどきどきする。
体に力がはいらなくなり、立っているのも辛くなる。
どうしよう、このままどうなってもいいとさえ思えてくる。
こんな気持ちは生まれて初めてで、自分でも戸惑ってしまう。
だが、それは突然終わった。
彼は自分の口に手を当てると、「ごめん」と謝った。
なぜ謝るの? 別に謝って欲しいなんて思ってないのに……。
だが彼の発した言葉の意味は罪悪感からではなかった。

「これ以上キスしたら、抑えられなくなる」

その言葉は私を抱きたいと言っているようなものだった。

「じゃあ、さっき修平さんの部屋で話していたときのあれは……」

自分でもなんでこんな大胆な質問をするのか分からない。
だけど聞きたかった。

「ベッドのあるあの部屋で君にキスしたら、押し倒していた。流石に無理強いできないだろう。今だって完全に君の気持ちを無視してキスしたようなもんだ」

「それは違います」

「え?」

その途端私の顔が熱くなる。

「それって……キスしても嫌じゃないってこと?」

私は黙って小さく頷いた。
すると専務は頭をくしゃくしゃとした。

「ああ、その反応ずるいぞ」

「なんで、ずるいんですか?」

専務は唇を噛みため息をついた。

「いいか、好きな女にキスしてもいいって言われたら、男はスイッチ入っちゃうんだよ」

「どんなスイッチですか?」

「自分でも制御できなくなってキス以上のことをしたくなるスイッチって言ったらわかる?」

流石に恋愛経験のない私でも専務の言った意味はわかった。
専務の目は「さあ、どうする?」と私の答えを待っているようだった。
どうしよう。
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