イジワル御曹司は偽のフィアンセ様❤︎
だって私そういう経験ない。だがそう思いながらもさっきのキスはドキドキして……どこか幸せな気持ちになって。
専務のことは一緒にいればいるほど好きが増している。ただ自分に勇気がないだけ。
もしここで受け入れたら?
私の躊躇する気持ちをなくしてくれるのかな?
気持ちの八割はそれでもいいと思っている。残りの二割は踏み出す勇気だけだった。

「あの——」

「ごめん」

それは同時だった。

「え?」

「こんな君を試すような言い方は男として失格だな。ごめん忘れてくれ。俺、風呂の用意してくる」

専務は私の横を通り過ぎ部屋に上がろうとした。
だがそれを阻止するように私の手が専務のシャツの裾を掴んでいた。

「陽奈?」

「、よくわかんないけど……どこにも行かないで欲しいって思っちゃって」

「お、おい、わからないなら手を離してくれ」

「いやだ」

「陽奈?」

「だってあんなキスされたら……私——」

再び私の唇は塞がれた。

深く、優しくとろけるようなキスだった。

「陽奈が俺のスイッチを押したんだよ。だけどちゃんと一生かけて俺の愛で責任を取る」

私は黙ってキスで返事をした。
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