イジワル御曹司は偽のフィアンセ様❤︎
秘密
実家に着いたのはお昼少し前だった。
「ただいま」
玄関を開けた私は驚いた。
父と母が玄関先で私たちの到着を待ち構えていたからだ。
二人は専務を見るなり顔を見合わせた。
「あらやだちょっと。どんな方かと思ったらすごいイケメンじゃないの」
母はアイドルでも見るかのように両手を口に当て普段より一オクターブは高い声を出していた。
そんな母を複雑な思いで見ている父。
専務を見たらきっとこんなリアクションをするのだろうと予測していたが、まったくそのとおりで私は顔を引きつらせた。
「はじめまして神谷修平と申します。この度色々とご迷惑をおかけいたしました」
「いいのよ。お父さんの上司の息子とのお見合いなんてね〜。後々のことを考えたら〜。とにかく狭いところですがお上がりください」
「失礼いたします」
靴の脱ぎ方や挨拶、どれもスマートで育ちの良さを感じる。
私も専務に続き靴を脱いだ。
すると女性用のスニーカーが。
「お父さん、誰かいるの?」
「綾が来てるんだ」
「え?」
綾は私の3つ下の妹だ。
性格は真逆で明るく、友達も多い。何より可愛い。
いまは会社に近いところに部屋を借りて一人暮らし中。
そんな綾がいるということは絶対に専務を見に来たに違いない。
ん? ちょっと待って。
妹は、私と同じ高校に通っていた。
3つ下だから、私が卒業したときに入学している。
ということは……。
やばい。
「どうかした?」
専務が私の顔を覗き込む。
「な、なんでなくないです」
「なに?」
「それは——」