イジワル御曹司は偽のフィアンセ様❤︎
何を言っているのかわからなくてもう一度綾に尋ねた。
だが帰ってきた言葉は同じだった。

「その友達、先生の赤ちゃん産んで……でも今はシングルマザーとして頑張ってる。だから申し訳ないけど私は姉ちゃんの結婚を祝福できない」

あまりの衝撃に頭の中が真っ白になった。
どういうこと?
でも聞くのが怖い。
聞くのが怖いけど、あんなかっこいいひとなら生徒だって教師を恋愛対象としてみるよね。
現に私が学生だった頃先生の人気はすごくて……でも妊娠だなんて。
すると母が私を呼ぶ声が聞こえた。
返事をして一階に降りる。

「もう、旦那様になる人をほっといちゃだめじゃない。お父さんきっと緊張してはにもはなせないわよ」

「う、うん。でも手伝いは?」

「今日はいいの。でもあんな素敵な人を見つけて、母さんうれしい」

「……うん」

そう返事をするのが精一杯だった。
和室に戻ると、母の心配を他所に二人は楽しそうに話をしていた。
だが私は心ここにあらず。
新たな不安に胸が締め付けられるような思いになった。案の定、みんなとの楽しい食事や会話も上の空でちゃんと受け答えができたのかも覚えていなかった。
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