契約夫婦の蜜夜事情~エリート社長はかりそめ妻を独占したくて堪らない~
 七瀬が答えて梨乃にジロリと睨まれた。
 本社ビルの一階には本店が入っている。
 県内一おしゃれな大通りにある本店勤務はこれまでも社内の女性達には憧れのポジションだったが、久我が来てからはより一層激戦となった。
 つまり、本社ビルに出勤をする久我に会える確率が高いということで。
 若くて、独身、背が高くて見た目も良く、加えてエリートとなれば、適齢期の女性社員が放っておけないのは当然だ。
 その久我が飲み会に参加するとなれば女性陣は大喜びするに違いない。
 けれど、久我は首を横に振った。

「誘ってくれて申し訳ないけど、私は遠慮しておくよ。せっかくの交流会なのに、私が行ったらみんな肩の力が抜けないだろうからね」

 確かに。
 営業マンたちはそうだろう。
 久我は約二年前に『セントラルホーム』へ来たのだが、それ以前は全国に支店がある国内最大手の不動産会社に在籍していた。
 そしてその頃から県内では尋常ではない売り上げを叩き出すカリスマ営業マンとして、有名な存在だった。
 『セントラルホーム』の副社長となった今もその手腕は衰えてはおらず、憧れのような気持ちを抱いている営業マンも少なくはないのだ。
 その久我が急遽交流会に参加するとなると、いつもの飲み会とは違ってくるに違いない。
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