契約夫婦の蜜夜事情~エリート社長はかりそめ妻を独占したくて堪らない~
 晴香は一生懸命に彼を誘う。
 どうすればいいのかは、わからない。でもどうかこの行為に彼が応えてくれますように、と強く願う。
 どうか、どうか、このままなにも言わないで、このまま…。
 ゆっくりと、孝也が晴香に応え始める。晴香の動きに合わせるように、孝也の息が熱を帯びる。
 大きな手が、背伸びをする晴香の身体を這い回り、晴香の形を確認する。

「ん…た…かや…」

 思わず漏れた晴香の声。
 それを合図に突如攻守が逆転した。

「あっ、んんっ…!」

 拙い晴香の誘いでは足りないとでもいうように、孝也が晴香に入り込む。晴香の中の弱い部分を刺激して、主導権を主張する。いつもより激しく執拗に愛撫して、晴香を圧倒し始める。
 強い刺激に晴香は思わず膝を折る。その瞬間ふわりと抱き上げられたような浮遊感、背中に感じる冷たいシーツの感触に、ベッドに寝かされたのだと晴香は気付く。
 唇が離れてゆっくりと目を開けば、視線の先に、情欲の炎を浮かべた孝也の瞳。晴香は大きな安堵を覚える。
 少なくとも今の彼は、晴香を抱くということに苦痛を感じてはいないようだ。
 言いたいことは胸の奥に閉じ込めて、偽りの愛でこの夜を乗り切ることに決めたのだろう。
 晴香をベッドに縫いとめて、孝也の本格的な攻めが始まる。唇、頬、それから耳、首筋に至るまで、熱いキスが降ってくる。それと同時に大きな手が身体中を這い回る。その感触に、晴香の身体は素直に反応し始める。愛しい人に触れられる喜びを、両手を広げて享受する。
 愛してくれていなくても、彼が触れるのは私だけ。
 ずっとずっと私だけ…。
 大丈夫、それで満足できるはず。
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