契約夫婦の蜜夜事情~エリート社長はかりそめ妻を独占したくて堪らない~
満月の夜
「ツインに空きがあってよかった」
ジャケットを脱ぎながら孝也が言う。
晴香はうつむいて、
「急に来てごめんなさい」
と答えた。
もう何度も口にした謝罪の言葉に孝也は「それは大丈夫だけど…」と言って戸惑うような眼差しを晴香に向けた。
ホテルのロビーで藤堂が去ってから、すぐに孝也は東京まで来たわけを晴香に尋ねた。
だが晴香は答えられなかった。
人目のある場所でする話ではないと思ったからである。
そんな晴香に孝也は緊急事態ではないのだということを確認してから、一旦フロントへ寄り、ホテルの部屋をシングルからツインに変更した。時間から考えて晴香が今夜は帰れそうにないと判断したようだ。
そして今、部屋でふたりきりである。
晴香はうつむいたまま、バッグをぎゅっと握りしめる。胸がドキドキとして息苦しいくらいだった。
孝也に言わなくてはいけない言葉と知りたい疑問が頭の中をぐるぐるまわっているのに、なにからどう話し始めればいいのかまったくわからなかった。
考えてみれば晴香は自分から誰かに告白をすること自体が初めてなのだ。学生時代の幼い恋はいつも見ているだけだったし、三年前の恋は相手の男性からのアプローチで始まった。
初めてのことは、いくつになっても少し怖い。
でも言わなくては。
ジャケットを脱ぎながら孝也が言う。
晴香はうつむいて、
「急に来てごめんなさい」
と答えた。
もう何度も口にした謝罪の言葉に孝也は「それは大丈夫だけど…」と言って戸惑うような眼差しを晴香に向けた。
ホテルのロビーで藤堂が去ってから、すぐに孝也は東京まで来たわけを晴香に尋ねた。
だが晴香は答えられなかった。
人目のある場所でする話ではないと思ったからである。
そんな晴香に孝也は緊急事態ではないのだということを確認してから、一旦フロントへ寄り、ホテルの部屋をシングルからツインに変更した。時間から考えて晴香が今夜は帰れそうにないと判断したようだ。
そして今、部屋でふたりきりである。
晴香はうつむいたまま、バッグをぎゅっと握りしめる。胸がドキドキとして息苦しいくらいだった。
孝也に言わなくてはいけない言葉と知りたい疑問が頭の中をぐるぐるまわっているのに、なにからどう話し始めればいいのかまったくわからなかった。
考えてみれば晴香は自分から誰かに告白をすること自体が初めてなのだ。学生時代の幼い恋はいつも見ているだけだったし、三年前の恋は相手の男性からのアプローチで始まった。
初めてのことは、いくつになっても少し怖い。
でも言わなくては。