契約夫婦の蜜夜事情~エリート社長はかりそめ妻を独占したくて堪らない~
「なによ」

「晴香、さっき自分で言ったじゃないか、私は鈍いって。それたぶん俺に関してだけじゃないからね?」

「な…! に、鈍いとは言ってないわよ。鈍いのかもって言ったのよ」

「一緒だよ」

 そう言って孝也は腕の中の晴香をベッドへ優しく押し倒した。

「きゃっ! 孝也?」

「俺の晴香は本当に危なっかしいからね。全然慣れてないくせに、合コンまがいの交流会に参加しようとするくらいだからさ。あの日港店で偶然田所店長から聞いたときは、本当に、何を考えているのかと思ったよ。…晴香に、自覚がないなら身体中にたくさんしるしをつけちゃおうかなぁ。男除けに」

「な…! だ、ダメよ! 絶対にダメ」

 そんなことをされてはたまらないと晴香は慌てて声をあげる。そして精一杯怖い顔をして彼を睨むけれど効き目はまったくないようで、彼は鼻を鳴らすだけだった。そしてその唇が、晴香の首筋目掛けて下りてきて…。

「ス、ストップ! ストップ! じ、自覚します! これからは気をつけます」

 晴香の言葉に孝也の唇は寸前でぴたりと止まり、少しだけ軌道修正をして頬にちゅっと音を立てて触れた。
 晴香はホッと息を吐く。でもやっぱりひとこと言わなくてはと思いもう一度彼を睨んだ。

「い、嫌がることはしたくないなんて言ってたくせに」

 さっきの落ち込みはなんだったんだと思いながら晴香が言うのを孝也が涼しい顔で一蹴する。

「こういうことは、別だろ。でもそういえば自分でも知らなかったんだけど、俺、案外独占欲強いみたい」

「そんな…、ん」
 
 孝也の唇がこれ以上は反論させないぞとでもいうように晴香の唇に下りてくる。
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