契約夫婦の蜜夜事情~エリート社長はかりそめ妻を独占したくて堪らない~
 ところで、孝也が"合コンまがいだ"と言い捨てた交流会だが、結局晴香は参加することになった。
 結婚後はどこかいつも平常心でいられなかった晴香は、うっかりしていてキャンセルの連絡を入れ忘れていたからだ。
 さらにいうと、この交流会には孝也との結婚で一躍有名人になってしまった晴香を見るためだけに参加する社員も多くいると幹事から聞かされて、尚更キャンセルできなくなってしまったのだ。
 そして、夜風も少し涼しく感じるようになってきた九月の終わりのある夜、真新しいレストランを貸しきって、『セントラルホーム』の交流会が開催された。

「それにしても驚きでしたね、店長」

 港店の営業マンのひとりが琥珀色のビールをごくごくと飲んで、上機嫌で田所に話しかける。
 結婚式の二次会によく使われるというこのレストランは、半分は開放的なガーデンテラスの席である。都会の夜空に色とりどりの電球がつるされて、ちょっとしたお祭り気分が味わえる。そのテーブルのひとつを港店のメンバーは陣取っていた。
 交流会なのだから、他店の社員と交流するべきなのかもしれないが、社内で絶大な人気を誇る副社長との結婚が公になってからすぐという特殊な状況にある晴香を心配し、皆で囲んでくれているのだ。
 その中には、保護者として付き添うと張り切ってついてきた田所もいた。
 その彼がにっこりとして頷いた。
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