指先で魔法を紡げたら。
仁科は知らないんだ。
わたしがプロフィール帳を書いてって頼まれたことが一度もないことを。
「へー、それでどうなの?もしも魔法が使えたら」
「...うーん。そうだな。とりあえず、億万長者になるだろ。それから、空を飛んで──」
目をキラキラ輝かせて、少年みたいに楽しそうに笑う。
冷たい男。
酷く冷たい。絶対に、わたしを助けてくれるなんて言わないから。
魔法なんてファンタジーなものを出したって、決して、仁科はわたしを助けてくれるだなんて言わないから。