指先で魔法を紡げたら。
しゃがみこんで、膝に引っかかって、引っ張られて、少しピンとしたスラックス。
わたしの方を見て、わたしが潰されたコガネムシに気づいてなかったでしょって言うみたいに見つめて。
俺が初めて見つけたんだよって言ってるみたいで。
それから、かわいそうにって小さく口にして、スっと立ち上がった。
仁科は優しい。
そして、知らないうちに残酷で、冷たいヒト。
誰一人としてわたしたちの知ってる人が通らないからって、この公園を選ぶのも知っている。
わたしといっしょにいるのが、誰にもバレたくないから。
目に見えてわかってしまうから、苦しくて。
それでいて、そんな残酷さすらわたしの中でひとつの感情にしかたどり着けない。