指先で魔法を紡げたら。
「カワイソウだね」
もしも魔法が使えたら。
わたしは仁科の大きくて、それでいて少し白い、手を見た。
長い指を見た。
均等に、綺麗に切られた爪を見た。
丸みを帯びた指先を見た。
その指先を、わたしの首に。のどに。
触れて欲しい。
両手の指先で触れて欲しい。
それから、グッと力を入れて、わたしにさいごの幸せな魔法をかけて欲しい。
わたしは魔法なんて使えなくていいから。
その指先から魔法を紡いで欲しい。
End.