雨のち木漏れ日、時々キャンディ
プロローグ
その部屋には、まるで木漏れ日のように柔和な空気が満ちていた。
優しく、柔らかく、私をその空気が包み込もうとする。
部屋の一画には、まるで居酒屋の個室のように仕切られた空間があって、私はこの部屋の番人に促されて個室へ足を踏み入れた。
個室はローテーブルを挟んでソファーが両サイドに配置されたシンプルな空間。
ローテーブルの上には卓上カレンダーと、小さなサボテンがなぜか置かれている。
グリーンシトラスの香りは、棚の上のアロマディフューザーから香ってくるものだった。
促されるがまま、ソファーに腰を下ろすと、ローテーブルを挟んだ向かいのソファーに番人も腰を下ろした。
グレージュの長めのウェーブした髪とアンバーの瞳を持つ、若い爽やかな男性。
彼がこの部屋の番人だ。
「はじめまして。スクールカウンセラーの椿陽平(Tsubaki Youhei)です。」
そして私はこのとき、彼に全く心を開いていなかった。