雨のち木漏れ日、時々キャンディ
3
スマートフォンの画面を見ると、ちょうど10時になったところだった。
私は駅構内の改札の近くに1人で立っている。
オフホワイトにブラックの小さな花柄が入ったワンピース。
足元は、ビジュー付きの黒のローファーと、ワンピースに色合いを合わせた履き口がメローのクルーソックス。
バッグは肩掛けできる淡いラベンダーのミニバッグにした。
「あの、ユキさん?」
声をかけてきたのは、どこにでもいそうな20代の男性。
私は微笑んで、
「はじめまして。」
と彼に言った。
すると彼は、少し安心したような表情を浮かべる。
「可愛いですね。」
「敬語外して?私はあなたの彼女だもの。」
今日だけは、ね。
「行こ?」
彼の腕に自らの腕を絡ませ、私は言った。
一瞬、彼は少し驚いたような表情をしたが、
「うん。行こうか。」
と返事をしてくれる。