雨のち木漏れ日、時々キャンディ
「あのね、。」
そう切り出した私に、陽平は何かを察したように姿勢を正す。
「私、一人暮らししているの。親から生活費の援助は受けていない。自分で稼いで生きているの。」
ワケありの私の話を、陽平は相槌を打って、メモを取りながら聞いていた。
「実の父親はアルコールが入ると暴力を振るう人だった。中学1年のとき、やっと母親は覚悟を決めて離婚した。でも母はすぐに違う男の人を連れてきたの。」
誰かにこの話をすることなんてないと思っていたのに、つらつらと言葉が出てきて止まらない。
「中学3年になったくらいのとき、母はその人と再婚した。でも私はその男の人から性的虐待を受けて……、それで家を出ようと思ったの。」
「なるほどね。」と、一言だけ彼がそう漏らした。
そのときの彼の表情はどこまでも真剣だった。
「思い出すたびに呼吸が乱れて、消えたくなる。消えたくなって、何度も手首に傷を作った。」
「そっか……。左の手首のリストバンドは傷跡隠し?」
彼の言葉に私は頷く。