雨のち木漏れ日、時々キャンディ
第一章
1
扉にかけられたプレートが『在室中』となっていることを確認して、ノックをした。
中から「どうぞー。」と軽い返事が聞こえたので、遠慮せずその扉を開ける。
グレージュの髪の彼は、私の姿を見るなり、
「やっぱり雪花だった。」
と言って笑った。
「陽平、聞いて〜。」
この部屋の番人である陽平に、私は躊躇なくマシンガントークを仕掛けようとしているところ。
陽平はそんな私にはもう慣れっこで、颯爽と扉の『在室中』のプレートを『面談中』に変えて、私に奥の相談室へ行くよう促した。
私がソファーに座ると、彼もローテーブルを挟んだ向かい側のソファーに座り、いつものセリフを言う。
「キャンディ、食べる?」
「ミルク味のやつがいい。」
「お、ラスイチだ。ラッキーだね。」
ケースの中からミルク味のキャンディを取り出して、渡してくれる彼。
それを開封して口に含むと、甘くて優しい香りと味が口いっぱいに広がった。