ふたつの羽根

陸が悪いんじゃないよ。


あたしの身体が恐がってただけ。


ごめん…



しばらくの沈黙の間、下を向くあたしに「りーな」と陸の声が耳に伝わり、あたしは目線を上げる。


目が合った瞬間うっすら笑う陸を見て、あたしも思わず微笑む。

さっきまでの気まずさが一気になくなったように思えた。 


あたしはテーブルに置いてある額を両手で握りしめ口を開く。 



「これ、あたしが持ってちゃ駄目?」

「えっ…、別にいいけど何で?」 

「あたしのと重ねて置いとく」



スーっと額を撫でると「いいよ」と陸は呟いた。


「ありがと」 


“重ねて置いとく”


間違った事は言ってないと思う。

だけど…


2枚の羽根があると背中に羽根がはえたみたいで、いつでもどこでも飛んで行けそうな気がしたから。


< 130 / 275 >

この作品をシェア

pagetop