ふたつの羽根
陸が悪いんじゃないよ。
あたしの身体が恐がってただけ。
ごめん…
しばらくの沈黙の間、下を向くあたしに「りーな」と陸の声が耳に伝わり、あたしは目線を上げる。
目が合った瞬間うっすら笑う陸を見て、あたしも思わず微笑む。
さっきまでの気まずさが一気になくなったように思えた。
あたしはテーブルに置いてある額を両手で握りしめ口を開く。
「これ、あたしが持ってちゃ駄目?」
「えっ…、別にいいけど何で?」
「あたしのと重ねて置いとく」
スーっと額を撫でると「いいよ」と陸は呟いた。
「ありがと」
“重ねて置いとく”
間違った事は言ってないと思う。
だけど…
2枚の羽根があると背中に羽根がはえたみたいで、いつでもどこでも飛んで行けそうな気がしたから。