ふたつの羽根
陸はきっと、いつもの場所にいるんだ。
あたしには分かる。
電話を切ったあと、あたしは陸がいる裏路地まで走った。
相変わらず街中は人で溢れているけど、その人さえ見えなくなるぐらいに真っ直ぐ突っ走っていた。
迷路のような道を止まる事なく足を進めて行くと、丁度地下に繋がる階段の所で陸はしゃがみ込んでタバコを吸っていた。
息を切らしながらゆっくり近づくと陸は凄く驚いた顔をしてあたしを見た。
「えっ、里奈?」
陸はタバコを地面に押し潰し火を消してから立ち上がった。
思わず陸の瞳にあたしの体は吸い込まれていって、あたしは陸の体を抱き締めていた。
「会いたかった…」