ふたつの羽根
第三章=涙=
身体の傷
あっと言う間に日は過ぎ太陽が勢いよく照りつけてくる、この8月。
夏休み…
一人で街中を歩いている時だった。
どうしても、どうしても会いたくない人物があたしの目の前に立って微笑んでいる。
彩乃さん…
思わずあたしの足は1歩、後ろへさがるのとは逆に彩乃さんはカツっとヒールの音をたて前に足を進めてくる。
「あー…久しぶりね。こんな所で出会うなんて」
近づいてくるたびにキツイ香水の香りが漂り鼻の奥に突き刺さる。
真っ黒なドレスに高級そうな腕時計をつけ、爪も赤であれば唇も真っ赤。
本当にホステスの人だ。
「あのさ、丁度いい機会だし話したい事があるのよね。ちょっといいかしら」
丁度いい機会?
何がいい機会なわけ?