ふたつの羽根
「何ですか?」
「そおね…ここではあれだから場所かえましょ?」
ここでは“あれ”って何?
別にあたしはここでもいいし、あたしは話す事なんて何もない。
彩乃さんは周りを見渡しながら一軒のカフェを指差した。
道路を挟んで奥に見えるのが一軒の小さなカフェ。
「行きましょ?」
勝手に話を進めていく彩乃さんに一息吐き、仕方なく足を進める。
帰ればいいのに…
断ればいいのに…
まるで、もう一人の自分が心の奥底から連発しているようだ。
「何飲む?」
2人掛けの小さな机に向かい合わせに座ると同時に彩乃さんは聞いてきた。
「結構です」
何もいらない…
何も飲みたくない、この人と。