ふたつの羽根
「そう…」
定員を呼び付けるなり彩乃さんは「コーヒー2つ」と頼む。
断ったのに…
そうもいかないとでも思ったんだろうか。
彩乃さんは隣の椅子の上に置いている鞄から小さな箱を取り出した。
…タバコ。
その箱の中から1本取り出し真っ赤な唇に挟み込む。
火を点けたライターをテーブルに置き、彩乃さんはさっそく話題を切り出した。
「あなたさ、陸の女なんでしょ?」
“校門の所にいた人に聞いたわよ”
そう付け加えて彩乃さんは真っ赤な口元の端を少しあげ微笑む。
その微笑んだ口にタバコをくわえた時、目の前に2つコーヒーカップが置かれた。
彩乃さんは軽く頷いた後、煙を吐き出した。
「悪いけど別れてくれるかな?」