ふたつの羽根
「…えっ?」
あたしには何がおこったのか全く分からなかった。
タバコを灰皿に打ち付けながら砂糖もミルクも何も入れていないカップを反対の手で取り、コーヒーを口にした。
カチャ…
カップとお皿が触れ合うと彩乃さんは「あたしと陸の関係って知ってる?」と笑みを漏らしながら言ってきた。
関係…
思い出したくない。
いったい何が言いたいの、この人。
あたしの目の前に置かれているカップから慌ただしく湯気が上がっていく。
まるで、あたしの心拍数のように慌ただしい。
だまり込むあたしに彩乃さんはうっすら笑った。
「知ってるのね。ところでさ、陸ともうヤったの?」
えっ?
「何をですか?」
思わず出た言葉だった。