ふたつの羽根
ゆっくり扉を開けると、静まり返った部屋で拓真先輩が一人ビリヤード台にのめり込むようにして玉を弾いていた。
その姿をジッと見ていると拓真先輩はあたしの姿に気づき笑みを漏らす。
「里奈ちゃん呼び出してごめん」
「いえ、暇でしたから」
中に入りソファーに腰を下ろすと、拓真先輩はカウンターに入りグラスを手にあたしの所まで来た。
「はい、どーぞ」
目の前のテーブルに置かれたオレンジジュースを見て、あたしは軽く頷く。
グラスを手に取りオレンジを口に含むあたしを見て「元気ねぇじゃん」と拓真先輩は前のソファーに腰を下ろした。