ふたつの羽根
「幸せって何だよ…」
小声で呟きながら拓真先輩は美紀さんに向かって叫んだ。
「まぁーまぁー」
「まぁーまぁーって何よ?」
「そのままの意味。美紀は?」
「あたしも、まぁーまぁーだよ」
「同じマネしてんじゃねぇよ」
拓真先輩が叫んだ後、美紀さんは笑みを漏らし空に向けて大きく手を振り、あたし達に背を向けて歩きだした。
拓真先輩は一息吐き、横断歩道に目を向ける。
その横断歩道の信号は、赤だった。
あたしには何となく分かった。今の拓真先輩の心の色と同じって事を。
青になったと同時に、あたし達の足も前に進みだし、拓真先輩の口が開いた。
「あいつ俺の幼なじみ」