ふたつの羽根
有亜は答えることなく、あたしの腕を引っ張り教室を飛び出した。
「ちょ、ちょっと有亜痛いって」
あたしの腕を離そうともせず強引に引っ張る。
そして有亜は焦りながら「先輩達が…」と声を上げ階段を駆け上がった。
先輩達が?
パニくる有亜を見て、あたしも混乱し始める。
そして着いた場所は屋上で、そこから凄い怒鳴り声が飛んできた。
「お前、泣かせてんじゃねぇよ」
怒鳴り声の主はどう考えても拓真先輩だった。
その声にあたしの身体は震え、全開に開かれた扉から中を見ると拓真先輩が陸の胸ぐらを掴んでいた。
えっ…
その光景を見て一気にあたしの身体は硬直する。