ふたつの羽根

陸が顔を上げた瞬間、あたしの顔は曇る。

口元が腫れていて血が出ている。おまけに握っている拳には無数の傷。


拓真先輩と?


思わず目を逸らすと「里奈?」と小さな声を出して陸は立ち上がった。


「ちょっといい?」


そう言って陸は足元にある鞄を2つ持ち足を進め、あたしはその後を追う。


校門を出て人気のない所まで来ると陸はすぐに口を開いた。


「ごめんな里奈…」


そう呟いて陸はギュッとあたしの体を抱き締めた。


陸の優しい声が聞きたかった。

陸に触れたかった…

陸に抱かれたかった…


ずっとずっと待ち望んでいた事なのに…。 


それなのにあたしは…


「もう辛いよ。苦しいよ。陸と居るのは辛いよ」


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