ふたつの羽根

何度、携帯の画面を見てはため息をついたのかも分からない。 

だって何回みても何回みても時間は全然過ぎ去らない。 

こんなに時間が遅く過ぎる事を初めて知った。


あたしは両膝の上に置いた腕の中にスポッと顔を埋め込んだ。

車の走り去る音が異様に頭を痛ませ、過ぎ去る人達の足音でさえ不愉快に感じる。 


「ねぇ、制服着たまま何してんの?」

「俺達とどっか行かね?」 


その頭の中をもっと邪魔してくるのは、いかにも軽そうな声を出してくる男達だった。 


今、頭を上げると確実に“遊んでくれるんだ”と言う誤解を招くだろう。

だからあたしはあえて腕の中に埋めている顔は上げない。 


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