ふたつの羽根
「おまわりさーん」
苛立ちの空間が一気に女の人の声でかき消された。
男はチッと舌打ちをし「うぜっ」と声を漏らし人ごみの中に消え去るようにして入り込んでいった。
「何あれ…こっちがうざいっつーの」
嫌な口調で呟き、すぐさま女の人はあたしの隣に座り込みため息をつく。
そしてすぐに沈黙をなくすかのように、その人は口を開いた。
「何してんの?浮かない顔して…ってか、あたしの事知ってる?」
知ってるも何も…
この人、校内で一番綺麗って言われている先輩だもん。
そう、陸と何回か一緒に話している姿を見た事がある。
何?またこの人も嫌がらせ?
勘弁してよ。