ふたつの羽根

一瞬にして、あたしの胸はドキッと飛び跳ねた。


“別れる”と言う言葉に敏感になっているあたしの心臓は急速に走りだす。


別れないよ…

そう思っていてもあたしから離れようとしてたんだ。


今さら何て言う…
今さら遅いよ…


時間が経つにつれて言いたい言葉が分からなくなる。


きっと、これがあたしの弱い心。


しかも目の前にいる圭介くんにだって何て言えばいいのか分からない。 

唇が重くて開かない…


そんなあたしを見て感じとったのか圭介くんはすぐさま口を開いた。


「動き出した時間に遅いも早いもないと思う」


そう微笑んで、まるで嵐のように圭介くんは、あたしに背を向けて歩きだした。


“今さら遅いよ”

頭の中でずっと思っていた言葉を、まるで透かして見ているかのように圭介くんは言った。




“動き出した時間に遅いも早いもない”と… 


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