ふたつの羽根

「入る?」


玄関に指差すあたしを見て有亜は首を横に振る。


「いいよ。すぐ帰るし」

「どーしたの?」

「どーしたの?じゃないよ。それは里奈じゃん。今日、里奈が帰った後、香先輩が心配して来てたよ。あたしが何も知らないって言ったら凄く驚かれたよ。神藤先輩に何で別れ告げてんの? 

何で言ってくれなかったの?何で一人で抱え込むような事してるの?何で?あたしは里奈の友達じゃないの?」 



シン…と静まり返った空間に勢いよく飛び掛かってきた有亜の声に胸が締め付けられる。


言わないの…じゃなくて有亜には言えなかった。

有亜には今まで色々と心配させてたから言えなかった。 

また心配させたくなかった。ただそれだけの事だった… 

だけど有亜は眉をギュッと寄せあたしを睨む。


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