ふたつの羽根
「ってか、話なら終わったはずだけど」
話なら終わったはず?
えっ、陸…
彩乃さんと会ったの?何、話してたの?
うっすら笑う彩乃さんは初めて会った時と同じ、ドきつい香水に真っ赤な唇だった。
いくらするのかも分からないぐらいの高級時計に高級鞄。
また、あたしに何が言いたいの?
って言うか、顔見たくない。
そう思った瞬間、ギュッと握り締めていた陸の手を離していた。
「…里奈?」
優しい声で囁かれた陸の声すら嬉しくもなく、あたしは重い唇を動かしていた。
「ごめ…ッ。帰る」
「はっ?帰るって?」
さっきまでの幸せが一気に崩れたように思った。