ふたつの羽根
微かに震える唇と震える手足。
何もかも嫌。
“陸は渡さない”
って怒鳴りつけてやりたいけど、そんな気力すらない。
帰る選択をとるなんて、ホントに情けなくて最低な奴かも知れないけど、今のあたしは無気力。
「ごめん。陸…」
そう呟いて、あたしは陸に背を向けて走りだした。
「おいっ!里奈」
背後から聞こえてくる陸の叫ぶ声まで無視して、あたしは走った。
とくに行く所もないあたしは家に帰った。
玄関で靴を脱いですぐ、その場の床にペタンと座り込んだ。
乱れた呼吸を落ち着かせようと何回も深呼吸をする。
「あっ、里奈帰ってたの?」
背後からの声に飛び跳ねる。
恐る恐る後ろを振り返るとママが立っていた。