ふたつの羽根

戸惑うようにして有亜は鞄を抱え、あたしはクルっと有亜の体を回し背中を押してドアに足を進める。


「ちょっ、里奈」


顔だけ後ろに向けて叫ぶ有亜に「じゃーね」と有亜の背に触れていた手を離して振る。 


「えっ…う、うん。じゃーね」 


おどおどした有亜が教室を出た後、あたしは一息吐き自分の席に腰を下ろした。 


机の上に置いてある携帯を取りパカッと開ける。

6時間目に受信されたメールの内容が、そのまま目に飛び込んできた。


名前は表示されていない… 


だって、昨日あたしが破棄した相手だから。


“やっぱ昨日送ったメール無かった事にして”


「バカみたい…」 


誰も居なくなった教室の中、あたしの声が微かに漏れる。 

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