ふたつの羽根

あたしは全て忘れるようにしてメールを消去する。

パチンと携帯を閉じ鞄の中に突っ込んで立ち上がった時「里奈」と前のドアから声がした。


その声にあたしの体は微かに震え恐る恐る目を前に向ける。 


ドアに片手をつく純也の姿。 

あたしは睨むようにして唇を噛みしめ後ろのドアに向かって足を進める。 


「ちょっと待てよ」


掴まれた腕を反対側の手で押しのけ「今更、何?」と眉を寄せる。


「やっぱ里奈の事…」

「勝手な事、言わないでよ!あたしの事オモチャのように扱ってたじゃん。あたしが知らないとでも思った?純也にいっぱい女がいるって事ぐらい知ってたよ」 

「だから謝るって…」


謝るって何?

不適切な関係を楽しんでたくせに…


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